ファブレスメーカーだけど
製造現場との近さでは負けません

パートナー企業と一緒に品質を追求

製造現場から学ぶこと

コミュニケーションが密になることで、サンリツが学ぶことも増えていく。特に、サンリツでは比較的歴史が浅い箱モノの板金工程については、いまだに教えられることが多い。

「板金工場の側から、この設計図面通りだと作りにくいですよと、アドバイスをもらうことがあります。筐体の材料を曲げる位置の近くに穴があると曲げにくい。穴の位置ひとつでコストが違ってきます。あるいは、曲げではなく溶接で処理した方が、品質的にもコスト的にも有利な場合がある。より安くて適した別の材料があると、提案されることもあります。
いずれの場合も社内で検討した上で、アドバイスに従って設計を変更します。こうした地道な知恵は、エンジニア同士が密接なコミュニケーションを続けてこないとなかなか出てきません」(久保)

製品に使われるネジの本数対策も、学ぶべき課題の1つ。
サンリツには、多いもので200本以上ものネジが使われている製品がある。多量のネジは製品の製造や検査に大きな手間がかかる上、作業ミスのリスクが高くなる。コスト面でも不利だ。何より、納品後もネジの緩みや抜けの可能性があるため、品質保持のハードルが上がってしまう。

「ネジ留めで組立てるという傾向は確かにあります。でも、板金工場の知恵を借りれば、曲げとか抜き、リベット留め等の加工技術を取り入れて、ネジの数を大幅に減らす設計も可能になります。まだ、劇的に減らすことまでは出来ていませんが、徐々に進めている最中です」(島村)

ひと目で分かる設計図面を

実は、パートナー企業との意思疎通で、サンリツが20年来取り組んできたテーマがある。
設計図面の描き方だ。
言うまでもなく、作ってほしい製品の詳細を、製造委託先に余すことなく伝える媒体が設計図面である。

瞬時に正確な情報を読み取れる図面でないと、品質にも影響が出てきます 瞬時に正確な情報を読み取れる図面でないと、品質にも影響が出てきます

「製造委託先の企業はサンリツの製品だけを受けているわけではなく、数十社、場合によっては数百社から仕事を受けています。発注するメーカーの文化が違えば、設計図のスタイルにも個性が出てきますから、製造現場ではその違いを読み解いていかねばなりません。
その上、とかく設計図面は、こう描いておけば現場は分かるだろう、といった設計者目線で作られていることが多い。しかし、現場の作業者が瞬時に正確な情報を読み取れる図面でないと、作業に時間がかかりますし、品質にも影響が出てきます。昔は、図面にはいくつもの接点だけが描かれているものの、接点間にどの向きで搭載するのが正しいのかは、実装データを確認しなければならない、なんていう図面が当たり前のようにありました」(島村)

製造現場が理解しやすい図面とは、どんな情報をどう見せる図面なのか? 生産技術部が中心となってパートナー企業の現場の声をヒアリングし、開発部とともに図面の改善に取り組んできた。通常、パートナー企業との取引は、両社の営業部門が窓口となるが、それを越えて現場同士がコミュニケーションすることで、図面は双方にとって使いやすいものになっていく。

あたかもバーチャルな自社工場であるかのようにコミュニケーションができる。それが理想なんです あたかもバーチャルな自社工場であるかのようにコミュニケーションができる。それが理想なんです

「新しい製品を出すたびに、製造委託先の現場の声を社内にフィードバックするよう心がけています。図面については、長年にわたる改善の成果があって、最近では、パートナー企業から内容についての問い合わせは、ほとんどなくなりました。図面が分かりやすくなったことで、サンリツ社内で製品検査を行うスタッフも、個々人の技術的なスキルにかかわらず、誰でも検査の内容が理解しやすくなりました」(島村)

発注するメーカーにそれぞれ文化の違いがあるように、製造委託先にも文化の違いはある。そうした違いを乗り越えて、どの製造委託先に渡しても分かりやすいのがサンリツの図面だ。それは、ファブレスメーカーとして、自社とパートナー企業のパフォーマンスを最大限に引き出すための戦略ツールでもある。

「ファブレスメーカーであっても、製造現場とは、あたかもバーチャルな自社工場であるかのようにコミュニケーションができる。それが理想なんです」(久保)

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