FAの仕事を楽しむ

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「バーチャル」と「リアル」
両方の世界をつなぐからこそ面白い

サンリツオートメイションが得意とする仕事のひとつに、工場生産ラインのシステム構築がある。FA(Factory Automation)によって高度に自動化された現代の工場は、産業用ロボットをはじめとして、数多くの産業用機械をコンピュータ制御することで成り立っている。そのコンピュータシステムを開発し、生産ラインの“メインの神経回路”を構築するのがサンリツの役割だ。

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“ブラックボックス”の謎を解く

何のためのケーブルなのか、誰にも分からない配線が走ってていたりします 何のためのケーブルなのか、誰にも分からない配線が走ってていたりします

サンリツのFAチームが手掛けるのは、生産指示システムの構築。新設の工場であれば、システムはゼロから開発し、作り上げていく。大規模で複雑な生産ラインであるほど、開発も大変な作業になる。しかし、それとは全く別の次元で、非常にハードルが高いFAの仕事がある。それは、稼働中の工場で、一部のふるい設備を入れ替える仕事だ。実は、この仕事をきちんとこなせるシステム開発会社は極めて少ない。

工場の生産設備は長く使われるため、設置から20年、30年と経た機械が珍しくない。しかも、さまざまな生産機械メーカーの手によって、長年の間に生産ラインの増設や組み替え、機械の更新など、数多くの改善が繰り返されている。そのたびに生産指示システムも部分的に変更されているが、30年分の変更内容を正確に記録した文書や図面などのドキュメントが、全部揃っていることはまずあり得ない。

長年の間には、工場のシステム担当者も代替わりしている。現在稼働している目の前の生産ラインが、内部で具体的にどんな動きをしているのか、細部まで把握している担当者は誰もいないということさえある。

ITエンジニアリング部・生産システムグループでプロジェクトマネージャーを務める小島尚志は、幾度となくそうした場面と向き合ってきた。

「最近取り組んだ案件では、自動車の生産ラインで塗装工程の一部を、機能はそのままに設備を新しく置き換えました。最初から自分が作ったシステムであれば、さほど難しいことはないのですが、初めて触る設備ですと、中の配線がどうなっていて、どんな制御が行われているのか、外から見ただけでは分からない。
旧い設備なので、ドキュメント類もきちんとしていないし、操作盤を開けてみると、何のためのケーブルなのか、誰にも分からない配線が走っていたりもしました」

そういう時、小島は、配線ケーブルを1本ずつたどって、どこにどうつながっているのか確認するところから始める。

「工場設備の間を縫うようにして配線ケーブルが走っていますから、機械の隙間で、人が入るのがやっとという場所がたくさんあります。ポッチャリ型の同僚が通れなかったこともありましたね(笑)。危険で操業中は人が立ち入れないエリアや、塗装工程のように、着ている服を全部脱いで、所定の作業服に着替えないと入れないエリアもありますから、配線を確認するだけでも、かなりの作業になります」

配線を確認すると、次はそのケーブルにどんな信号が流れているのかを確かめていく。旧い設備を丸ごと交換するのではなく、一部だけを置き換えるわけで、置き換えた新しい設備は、元から接続していた既存の工作ロボットやベルトコンベアといった機械類とケーブルでつなぎ直す。配線はもちろん、そこに流れる信号のやり取りを完全に再現しないと、元通りには動かないとITエンジニアリング部長の橘 寿一は言う。

「正体不明のケーブルがあると、それが現在も使われているケーブルなのかどうか、使われているとすると、どんなタイミングでどんな信号を流しているのか、1つ1つ確かめていきます。旧い設備は、その時代の技術的な知識がないと分からないですから、長年の経験が役に立ちます。これまでの蓄積を基に、慎重に見極めていきます」

いわば長年のうちに“ブラックボックス化”した旧いシステムの動きを解き明かし、機能は寸分違えずに新しいシステムで再現していく作業なのである。しかも、作業のために生産を止めるわけにはいかない。稼働中の設備からデータを収集・解析し、テストを重ねていく。

ハードルの高さが楽しい!?

設備の一部を入れ替えるとどこに影響が出てくるのか、お客さまにアドバイスします 設備の一部を入れ替えるとどこに影響が出てくるのか、お客さまにアドバイスします

最終的なシステムの入れ替えは、工場が休みの日に行う。休み明けに再稼働するときが最も緊張する瞬間だ。

「何回もテストを重ねて検証していますから、100%正常に動く自信はあるんです。それでも、休み明けにラインが動くのを待っているとドキドキしますね。朝、操業開始のサイレンが鳴る瞬間は身震いするような緊張感を覚えます。前の晩に眠れないこともありますし、仕様や機能について、突拍子もない夢を見ることもあります(笑)。こればかりは、何百回経験しても慣れません」(小島)

コンピュータは、この30年間に性能が100万倍程度にまで上がっている。現代の目で見れば、30年前の生産設備は原始的とも映る。しかしそれ故に、旧い設備と新しい設備とを融合させるには、両方に精通した高い技術力が必要となる。

I/O(入出力)の接続方式ひとつとっても、最新の機器がネットワークケーブル1本で済ませているのに対し、旧い設備は数十本、数百本のケーブルを接続する仕様であることが多い。双方を接続するには、旧い設備の接点に、新しい設備から該当する機能のケーブルを1本ずつ割り当てていくしかない。長年にわたってシステム開発に携わり、新旧の設備に精通した現役エンジニアが揃うサンリツだからこそ、できる仕事なのである。

なので、工場のエンジニアからアドバイスを求められることもあると、ITエンジニアリング部・生産システムグループリーダーでプロジェクトマネージャーの冨ケ原達也は言う。

「お客さま側のエンジニアが若い方ですと、ずっと新しい世代のコンピュータ知識で来てますから旧い設備のことはよく分からない。旧い設備の一部を入れ替えると、どこにどんな影響が出てくるのか、システム全体の動きを踏まえて説明するような場面はよくあります」

旧い設備の入れ替えに限らず、FAの仕事には生産現場ならではの難題が次々と現れる。しかし、FAチームのエンジニアたちには、どこかそのハードルの高さを楽しんでいる様子がある。

「課題解決に苦労するのは楽しいですよ。自分が作ったシステムが動いて、生産ラインが稼働し、実際に製品が作られていく。コンピュータの動きそのものはバーチャルな数字の世界で、目には見えません。でも、それがリアルに自分の思い描いた通りに動く様子が見える。システム開発の仕事と、現場の仕事の両方をやっているからこその面白さが、FAの仕事にはあります」(小島)

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